ベトナム・中国・香港旅行記#01

空港をハシゴする

8月16日日曜日、私は羽田空港第3ターミナルにいた。声優・菅野真衣さんのバースデーイベント「菅野真衣バースデーサマー2026 Can Know New Me」というイベントに参加するためだ。羽田空港にはTIAT SKY HALLというイベントホールがあって、菅野真衣さんの生誕イベントはなぜかこの会場のことが大好きなのだ。この会場、空港の中にあるので、うっかり観客がジャンプして建物を揺らすような事態が起きれば、最悪の場合飛行機が止まって声優人生終わるらしい。おもしろい。

翌朝、私は中部国際空港第1ターミナルにいた。飛行機で羽田からやってきたのではない。16日の夜、東京から新幹線で名古屋に帰ってきて、その足で「飛ぶ」ためにやって来た。なんで? なぜ? 一体どうして?

事の顛末はこうだ。まず、私の高校来の友人が香港に留学している。次に、先述のとおり私には8月16日に羽田空港に行く用事があった。となれば、羽田に行った足で、香港に遊びに行ってしまおう。飛行機に乗れば5時間くらいで香港に着いてしまう。ところが、友人は8月17日は忙しいから、次の土日、すなわち22日に来いと言う。なるほど、そうなれば、折角だから月曜から金曜まで使って大陸を観光して、土曜日に香港に乗り込めば良いだろう。早速、羽田発大陸行きのフライトを調べよう。そういえば、去年卒業旅行でベトナムに行ったけれど、ハノイの街は駆け足でしか見ることができなかったな。ハノイから香港まで陸路で移動することにして、羽田発ハノイ行きのフライトを取ろう。おや、羽田発は時間が中途半端だし、値段も高い。どうやら新幹線代を加味しても中部発ハノイ行きを取ったほうが都合が良さそうだ。それでは中部発ハノイ行きを取ってしまおう──

それで、20時に羽田空港でイベントを観終えたあと新幹線で急ぎ帰名して、翌朝9時の便で中部国際空港からハノイに向かって飛ぶというトンチキな行程をこなすハメになってしまった。

お金がないので新幹線を豊橋で降りて名鉄の終電で金山まで帰り、カリテコバイクで爆走して昭和区の自宅に着いたのが午前1時。夜通し虚ろな目で荷造りして、日が昇ったらまたカリテコバイクで爆走して金山から中部国際空港行きの電車に乗り込む。

おかしい、昨日も同じような小綺麗な空港にいたのに、なぜか1回家に帰ったような気がする。いいえ、羽田空港に「赤福」の広告はありませんよ。ここは中部国際空港。午前9時発ハノイ行きというあまりにも丁度良いフライトが離陸する港。

ドリームリフターがいた。でかい

ドリームリフターがいた。でかい

ハノイ行きVJ921便に搭乗

ハノイ行きVJ921便に搭乗

それなりに大勢を乗せたベトジェットエア・VJ921便は定刻から約40分遅れて離陸した。飛行機に乗るのはこれが人生で4度目だが、エアバスA321に乗るのも4度目だ。そろそろボーイング社の飛行機にも乗ってみたい。

一応地理学専攻なので、離陸後しばらくは眼下に広がる景色を眺めていたが、そのうち雲とか海とかしか見えなくなったので、飽きて寝た。

安曇川河口の鳥趾状三角州

安曇川河口の鳥趾状三角州

ハノイについた

起きたら全然知らないところにいた。眼下には大きな川が流れ、工場や住宅街が横たわっているが全くどこなのか見当もつかない。どこだここは。まあ、どうせベトナムだろう。皆様、当機はまもなくハノイ・ノイバイ国際空港に到着いたします。ただいまのハノイの気温は……

TOYOTAがあった

TOYOTAがあった

HONDAもあった

HONDAもあった

ドスンと着陸して地の果てみたいなスポットに飛行機が止まった。飛行機降りてから入国審査に向かうまで通路が長すぎて途中3ケ所くらいトイレがあった。看板が全部ベトナム語で書いてある。すげー。

ながい

ながい

入国審査は思いの外空いていてすんなりスタンプを押してくれた。特に何も聞かれなかった。観光です。3日間います。ベトナムに滞在した後は陸路で中国に出国します。聞かなくていいらしい。ベトナムへようこそ!

ハノイの空の玄関口ノイバイ国際空港は地の果てみたいな場所にあって市街地までのアクセス手段は道路しかない。バスでもタクシーでも行けるが、いずれにせよ大渋滞を真正面から受け止める覚悟が必要になる。公共交通機関で市内に行くなら86番というバスが40分に1本(40分に1本!?)走っていてそれに乗るのが一番安い(たぶん)。オレンジ色の専用車両が充当されていて、一応大きな荷物を持ち込むことも配慮されている。

オレンジのバス

オレンジのバス

オレンジのバスに乗車。オレンジのバス、加速。オレンジのバス、速い。オレンジのバス、曲がる。オレンジのバス、速い速い。オレンジのバス、道の真ん中で急に止まった。たくさんの布が入った大きな大きな袋を担いだ女性が原付でやってきて、それをバスの運転手の足元に置いてあった袋と交換してどこかに行った。なんなんだ。

オレンジのバス、再加速。オレンジのバス、速い。オレンジのバス、速い速い。オレンジのバス、曲がる、オレンジのバス、速い。オレンジのバス、渋滞。オレンジのバス、渋滞に巻き込まれています。

ベトナムに来るのは2回目だけれど、自動車も原付もやりたい放題走っている道路環境には新鮮にびっくりしてしまう。とにかく前に進もうとする意思がすごい。これほどまでに自己中心的な走りばかりしていて、よく事故が起きないものだと勝手に感心していたのも束の間、反対車線に目をやると車がひっくり返っていた。普通に事故は起きている。

うますぎる

うますぎる

何分遅れなのかわからないが、とりあえず旧市街についた。お腹が空いたので、近くにあった店でPhở Bò(牛肉のフォー)を食べた。うますぎる。しかし、この店、Google Mapsに情報がない。そして、店の名前も忘れてしまった。値段も忘れた。つまり、次ハノイに行ったとしても、再びこのフォーにありつけるかは、かなり微妙である。旅とは一期一会の連続ですね。

ハノイ旧市街を歩く

ハノイはベトナム北部に位置する同国の首都で、経済規模こそ南部のホー・チ・ミン市に劣るものの、政治・文化の中心地として、また北部の経済の中心地として栄える大都市である。

ハノイ市街地は非常に広いが、中でもホエンキアム湖の北側に広がる旧市街は、古くから商業拠点として栄えてきたエリアである。旧市街には歴史を感じさせる狭小建物がひしめき合っており、さまざまな店舗が軒を連ねている。観光客も多いながら、地元の生活感も感じられる地区で、散歩しているだけでとても楽しい。ちょうど、外国人旅行者向けの宿もこの地区に集中しており、私もこの地区で宿を取った。

Hanoi Central Pod。Trip.comの半額クーポンを使って3泊で3,080円。朝食付き。安い。部屋はシンプルで清潔なドミトリーで、チェックイン時には1オタク3知らない人8ベッド8ロッカーであった。海外のドミトリーにチェックインすると、15時とかでもめちゃくちゃ爆睡している人ちらほら見かけるけれど、彼らは何者なのか、謎だ。

宿に荷物を置いて身軽になったので、散歩がてらChè(チェー)を食べに行くことにした。Chèとはベトナム風ぜんざいなどと紹介されることもあるが、明確な定義はよくわからない。とにかく、ベトナムで食べる甘いものは全部Chèだと思っているが、違うのかもしれない。

Chèという看板を掲げた店があった。Chè?と尋ねたら、Chè!と言われた。中に入って詳しいメニューを見せてもらう。写真付きで、とてもわかりやすい。メニューはいろいろあって悩んだが、一番見たことがなくて得体の知れないものを頼んだ。するとなんだか怪訝な顔をされた。Chèが食べたいと言って入ってきた外国人の注文に怪訝な顔をするということは、もしかしたら、Chèではないものを頼んでしまったのかもしれない。

細長い店内では、店主とどういう関係性にあるのか全く不明なおばさんが、腹筋ローラーを使いながら美魔女を目指していた。正直かなりアウェーだ。

注文して数分、届いたのは横長の皿に盛られたデザート的ななにかだった。左から、ココナッツアイスクリーム、マンゴー、緑色に染まった餅米。上には細切りココナッツと乾燥ココナッツが乗っている。どれも甘くて美味しい。ココナッツアイスはかなりコクがあったし、マンゴーは日本人好みの完熟ではなくて少し酸味が目立つ控えめな味だけれど、アイスクリームが甘いのでむしろバランスが良い。そして緑色の餅米は一見不気味に見えてしまうが、おはぎのような食感で美味しい。しかし、これがなんという料理なのか、全く分からない。これってChèなのだろうか。

Chèではないのかもしれない

Chèではないのかもしれない

美味しいChè(?)を食べたので腹ごなしに散歩をする。ハノイ初日なので正直どこをどう切り取っても面白い。比べるものでもないが、日本より人間が人間然として生きているような気がするし、上裸のおっさんが多い。そして原付でなんでも運ぶ。

とにかく原付が多い

とにかく原付が多い

路上でいろいろなものを売っている

路上でいろいろなものを売っている

載せすぎ

載せすぎ

適当にふらついていたら、線路の両側に店が立ち並んでいる奇妙な街区に出た。ここはハノイ・トレインストリート。世界的超有名観光地だ。どういう経緯かはしらないがベトナム国鉄の線路際に観光客向けのカフェが大量に立ち並んでいて、線路際ほんとうにキワキワのところに椅子を置いて、列車の通過を間近で見られるというのを売りにしている。普通に危ない。普通に危ないので本当は違法で取り締まりも行われているようだが、なんだかんだ生き残っている。なんでだ。ここはけっこう明確に観光地化されていて、おそらくメインターゲットは欧米人旅行者なのだろうが、普通にあらゆる物が高い。

接道要件とかないのかな

接道要件とかないのかな

とはいえせっかくここまで来たのだから、列車が通過するところを見たい。調べてみると、1時間後に列車がやってくるらしい。

時間が空くとなればやることはひとつ。そう、Chèだ。訪れたのは、トレインストリートから歩いて10分くらいのところにあるChè Sầu Liên (53 Hai Bà Trưng, HN)。Chè Sầu Liênと名乗るからには、当然ドリアンのチェーを食べられるわけで、ドリアンのチェーを頼んだ。

想像していたとおりのChèがそこにあった。甘いココナッツミルクに浸ったドリアン、寒天みたいなの、豆みたいなの、そして山盛りの氷。さっき食べたのは美味しかったが、あれはやはりChèではなさそうだ。これこそがChèなんですよ。うめー。

正真正銘のChè

正真正銘のChè

美味しいChèを食べて満足したのでトレインストリートに戻ると、列車の時間が迫っていることもあって線路際は観光客でいっぱいだった。みんなカメラを構えている。

警察官なのか警備員なのか鉄道職員なのかわからないが制服を着た人が大声で線路上にいる人を追い払うと、遠くで何度も鳴っていた警笛が次第に近くなって、真っ赤なディーゼル機関車(かっこいい)を先頭にゆっくりと列車が近づいてくる。線路際に人が密集しているので当たり前だが、歩いたほうが速いのではないかというレベルでゆっくり走っている。そして編成が長い。何を隠そうここは現役のベトナム国鉄の線路で、今通過している列車は終着・ハノイ駅に到着する直前なのだ。首都のターミナル駅のすぐ近くにこんな意味不明な観光スポットがあるのは、ベトナム国鉄とは相当大変な鉄道会社だ。

運転しづらそう

運転しづらそう

トレインストリートを行く列車はそれほど多くない。列車が通過してしまえば、皆用が済んだとばかりにどこかへ行ってしまう。私もご多分に漏れず、列車の通過を見届けて宿に帰ることにした。

宿に帰る道中でPhở Gà(鶏肉のフォー)とマンゴーのかき氷みたいなやつと路上で売っていた揚げドーナツを食べた。揚げドーナツはあまり美味しくなかった。全くハノイという街は食い意地を張るのにはもってこいだと思いながら寝た。


つづく